個人の情報発信源になりうるソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の利用状況を整理します。
X、Instagram、Facebook各利用者の約半数が発信もしており、もちろん就活生世代も含まれます。
研究調査から見えてくるのは、SNS発信者はノリが強く「自分を見てもらいたい」という傾向です。
ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS:Social Networking Service)は、スマートフォンやパソコンで不特定多数の人が交流できるサービスです。
不特定多数に簡易に発信できるSNSとして、Instagram、X(旧Twitter)、TikTok、Facebookの四つが主流です。
利用率は、NTTドコモが2025年2月に15〜59歳を対象とした調査をまとめた「SNS利用に関するデータブック」によると、X 78%、Instagram 77%、TikTok 43%、Facebook 35%でした(図1)。
これらSNS利用者のうち「発信もしている」人の率も調査されており、TikTok以外は利用者の約半数にのぼります。
同データブックによると、XとInstagramともに50%、Facebookでは46%でした。TikTokについては、撮影動画の発信が主だからでしょう、28%と低めです(図1)。
発信もする大学生42.3%、投稿者率9割超のBe.Realも
大学生のSNS発信率も調べられています。京都大学・岩瀬裕三子氏の論文「日本の大学生におけるSNS利用時間と朝食摂取パターンとの関連」によると、2022年10・11月時点で、平均年齢20.27歳の大学生で「発信もする」が42.3%でした。
高校生も同様に調べられています。NHK放送文化研究所「中学生・高校生の生活と意識調査」によると、「SNSで自分の体験や考えなど」を「不特定多数の人」に投稿する高校生は2022年時点で14%でした。
就活生世代が発信に利用しているSNSとして、上記の四つ以外で注目しておきたいのが、BeReal.とSnapchatです。
BeReal.は「ランダムな時間に通知がくる」「2分以内に撮影して投稿することを求められる」などの特徴をもつSNS。ありのままの自分を共有できるため若い人たちに人気があると見られます。
SHIBUYA109エンタテイメントの調査では、15~24歳のBeReal.利用率は、調査対象が女性にかぎられますが、33.4%。うち「投稿もしている」は92.2%でした。
一方、Snapchatは、「投稿の閲覧時間を1〜10秒、または無制限で設定できる」など、内容が消えていく点を特徴としています。
同調査では利用率は2.9%ながら、うち「投稿もしている」は55.8%でした。
複数アカウント保有の背景に「別の顔でいたい」志向性
これらいずれのSNSでも、「若年層ほど、一つのSNSで複数アカウントを使用している」という傾向があります。
前述のNTTドコモ「データブック」によると、Xで「複数のアカウントを利用している」人は、10歳代で52%、20歳代で53%。
30歳代の39%、40歳代の27%、50歳代の17%と差がついています(図2 上)。Instagramでも同様の傾向が見られます。
若い人たちは一つのSNSで複数アカウントをどう使っているのか。
これについては、本名でのアカウント「本垢」と、匿名でのアカウント「裏垢」の使用を分けて、表向きの発信とそうでない発信で区別している意図が見られます。
マイナビ「2024年卒大学生のライフスタイル調査」では、男女とも複数アカウントの使い分けについて当てはまる内容として、1位が「本名と匿名(本垢・裏垢)」、2位が「リアルの友人・知人用とSNSのみでつながるため用」でした(図2下)。
ほかでは「趣味のジャンルごと」や「情報発信・投稿用と情報収集・閲覧用」などが続きました。
用途に応じて「別の顔でいたい」志向性がうかがえます。
発信する人はノリがよく「自分を見てほしい」傾向
SNSを「発信もする人たち」と「発信はしない人たち」に、どのような特性のちがいがあるでしょうか。
一般的にいわれるのは、SNS発信者は「承認欲求」を満たそうとする志向性が強いというものです。
自分の活動内容や考え方を発信し、「いいね」つまり他人からの肯定的な評価を受けたいという志向性といえます。
とはいえ、SNS“非”発信者がそうした承認欲求をもっていないわけでなく、程度の差といえるでしょう。
「発信もする人たち」と「発信はしない人たち」のより具体的なちがいについて、社会学の研究調査がなされています。
一言で表せば、「発信もする人たちはノリがよく、自分のことを見てもらいたい」「発信はしない人は内向的で奥手」と表現できそうです。
その調査とは、中央大学の松田美佐氏が2020年から2022年、二つの調査で計3500人を対象に「インターネット上で情報発信しない人」の特徴を探り、「発信する人」との差異を具体化させたもの。
以下、論文「インターネット上で情報発信しないのはどんな人たちなのか」から着目すべきちがいを紹介します(図3)。
趣味について、SNS発信者に多いという意味で差がついたのは「写真撮影」(17.6%、発信忌避者8.2%)、「ファッション」(34.5%、同24.7%)、「アイドルやタレントなどのおっかけ」(20.5%、同11.6%)でした。
一方、SNS発信忌避者に多いという意味で差がついたのは「映画や演劇」「スポーツ観戦」「ゲーム(スマホアプリ)」でした。
発信者は表現系・アピール系の趣味をもちやすく、発信忌避者は鑑賞系や遊戯系の趣味をもちやすいといえそうです。
また、SNS発信者に強めに見られた性格として、「話す友人によって、相手に対する自分の性格が変わることがよくある」(38.1%、非発信者は28.3%)がありました。
ほか、「ほとんどの人は信頼できる」「インターネット上のほとんどの人は信頼できる」という項目でも、発信者が非発信者より肯定的な傾向がありました。
これらは、相手ごとに対応を変えながらも、ノリよくためらわず接していく志向性といえそうです。
いっぽう、SNS発信忌避者のほうに強めに見られた性格では、「あてはまらない」傾向として、「他人とは違った、自分らしさを出すことが好き」や、「まわりの友人と比べて、恋愛への関心が強いほう」「自分から好きな人に積極的にアプローチしていけるほう」といった項目がありました。
松田氏は「SNS発信忌避者は若干『草食系』ということになろう」と述べています。SNS発信者とSNS発信忌避者でちがいが出なかった部分も注目に値します。
「特徴が見られなかった」項目として、「好奇心の強さ」「権威主義」「自己肯定感」「生活への満足」「排外意識」「(対面の)友だちづきあい」「テレビや動画共有サイトの利用」などが上がっています。
これらのちがいのなかった項目の存在は、「SNS発信する人というのは……」と決めつけないほうがよいというメッセージと捉えられるかもしれません。
とはいえ、SNS発信しない人とのあいだで差異のあった項目があるのもたしかです。
企業による就活者の「裏アカ調査」認知度は6割
SNSでの不用意な発信で不特定多数者からバッシングを受ける「炎上」の事例があとを絶ちません。学生ら若い人たちは学校側から一様に、SNS利用についての「ガイドライン」を提示されています。
しかし、実情は形式的な「べからず集」を示される程度で、リテラシーの度合は本人たちの意志の高さ次第というのが現状でしょう。
就活者たちの世代は自身がSNSに発信・公開した情報が、求職先の企業にも閲覧されうることをどれだけ認識しているのでしょうか。
朝日新聞が、企業側が就活生らの「裏垢」を特定して投稿内容を調べる「裏アカ調査」について、20歳代を中心に読者たちにアンケートをとったところ、こうした調査を知っていたのは「6割」だったといいます。
発信内容を企業側に見られるのを避けてアカウントを変更する人、調査の存在を知らずに発信しつづける人、知っていても発信しつづける人など、対応はさまざまと考えられます。
「エフェメラル」と「AIチャット」がSNSを変える可能性も
最後に、今後のSNS利用をめぐる変化の可能性について考えてみます。
まず、BeReal.の特徴に示したとおり、若い世代を中心に、短期間で内容が消えるかたちでの投稿・閲覧が増えていくことが見込まれます。
こうした使い方でのSNSを、「はかない」という意味の英語“ephemeral”から「エフェメラルSNS」といいます。投稿内容がすぐ消えてしまう分、不特定多数の人に気軽に投稿できる一方、閲覧される機会は減ることとなります。
もう一点、SNS発信の重要性を下げうる要素となりうるのが、生成型人工知能(生成AI)チャットの普及拡大です。
生成AIは基本的に人間からの呼びかけに肯定的に応じてくれます。自分の活動内容や考え方などをAIに伝えれば、それなりの承認欲求を満たしてくれるため、SNS発信の代替ツールになっていくかもしれません。
家族、学校・職場、SNSに次ぎ、AIが第四の承認媒体になろうとしているという専門家の見方があります。
自分のことについてだれかに関心をもってほしいという 願望は昔から人に存在しました。SNSはその願望をかなえた装置といえます。社会の情報化のごく身近な例といえるでしょう。
氾濫している個人情報をどう捉え、扱うかは、私たちに求められているテーマの一つです。
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